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ベトナム税務・会計レポート

ベトナム税務・会計レポート

ベトナム個人所得税

個人の所得に対して課せられる税金で、ベトナム居住者か非居住者により、税率や課税対象となる所得の範囲が異なります。

居住者/非居住者の判定

暦年もしくは、ベトナムに入国した日から連続する12か月で、ベトナムに183日以上滞在する者、あるいはベトナム国内に恒常的な住居を有する者(レジデンスカードを持つ、あるいは期間が183日以上の賃貸契約を法人名または個人名で結んでいる)は、居住者とみなされます。

恒常的な住居を有する場合、居住する国の税務署が発行した居住証明書があれば、非居住者とみなされます。

課税年度

原則、暦年ですが、初年度は、暦年で183日以上ベトナムに滞在する場合は、ベトナム入国初日から年末まで、暦年で183日未満の滞在は、ベトナム入国初日から12か月となります。

入国初日は、パスポートで初めてベトナムに入国した日や、労働契約書や任命書の日付とすることが一般的です。(2020年2月に、労働契約書や任命書のベトナム勤務開始日から個人所得税の申告を開始するというオフィシャルレターが発行されました。)

課税所得

給与所得、事業所得、投資所得、投資譲渡所得、不動産譲渡所得、賞金所得、ロイヤリティー所得、フランチャイズ所得、相続所得、贈与所得などです。

所得の種類、居住者か非居住者により、税率が変わります。

給与所得

会社から支給される給与や手当、賞与、会社が負担する費用などを含みます。
居住者は、全世界所得(ベトナム源泉所得だけでなく、すべての所得を含みます)に対し5〜35%までの累進税率が適用されます。

非居住者はベトナム源泉所得に対し20%の税率となります。ベトナム源泉所得が明確な場合は、ベトナム源泉所得、明確になっていない場合は、全世界所得を日割りしベトナム滞在日をかけてベトナム源泉所得を計算します。(会社が負担する費用も所得となります。)

1)所得控除

a)基礎控除 900万ドン/月

b)扶養控除 被扶養者一人につき360万ドン/月
扶養対象は、18歳未満の子供、定年年齢以上の無所得の配偶者や両親、大学生もしくは専門学校生の無所得の子供など。同居していなくても、控除可能です。
(注)月100万ドン以下の収入の場合、無所得とみなされます。

扶養控除を適用するためには、税務局へ必要書類とともに申請が必要です。

c)社会保険控除 社会保険、健康保険、失業保険など強制保険と呼ばれる保険料
日本本社からも給与支給があり、日本でベトナムの強制保険と同等の保険料を支払う場合は、それらの保険料も控除可能です。

d)所得控除の適用は、居住者のみです。

2)申告・納税
ベトナム法人からの給与はベトナム法人に、日本本社からの給与は本人に申告納税義務があります。

期中は予定申告・納税を行い、1年ごとに確定申告を行います。
予定申告が月次申告となるか、四半期申告となるかは、給与を支払った場所(国)や売上、源泉徴収額などによって決まります。

四半期申告・納税は四半期末の翌月30日までに、月次申告・納税は翌月20日までに行います。

確定申告は、年末より90日以内に申告・納税を行います。予定納付額の合計が、確定申告で計算された納税すべき金額に満たない場合は、差額を納付します。

ただし、非居住者は、四半期申告のみで、確定申告は必要ありません。

3)課税所得となる費用の例
*社員の家族の航空券、健康診断費用
*社員や家族のビザ、レジデンスカード取得費用
*社員の子供の学費以外の学校での費用
*ゴルフプレー代
*会計事務所へ委託した社員の個人所得税申告費用

4)非課税所得の例
*駐在員のベトナム赴任時の引越手当(労働契約もしくは社内規定に基づく)
*駐在員本人の年 1 回私用での一時帰国の往復航空券(労働契約もしくは社内規定に基づく)
*駐在員のお子様のベトナムでの幼稚園から高校までの学費(労働契約もしくは社内規定に基づく)
*社内旅費規程に基づき支給された出張手当
*社内規定に基づき支給された社員もしくは社員の家族のための慶弔金
*制服代(現金支給の場合は金額の上限あり)
*食事手当(上限あり)
*時間外手当の割り増し分
(注)多くの場合、非課税所得と認められるために条件がありますので、専門家に相談されることをお勧めいたします。

5)グロスアップとは
よほどの高所得者でない限り、ベトナムでの個人所得税は日本と比較するとかなり高額になります。ベトナム赴任後も、赴任前の給与と同じ金額の給与を支給されると、手取り金額が下がることになります。
赴任地により給与の手取り額に差が出るのを防ぐために、駐在員の給与は手取り金額を保証することがほとんどです。その場合、給与総額が個人所得税課税対象となるため、個人所得税の計算の際には、会社が負担する個人所得税も課税所得に含める必要があります。
手取り給与(ネット給与)から、給与総額(グロス給与)を計算する方法をグロスアップ計算と呼びます。